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校友会TOPICS

オリンピックに縁のある立教関係者を紹介

静寂の中で行われるスポーツ、ゴールボール。第二次世界大戦で視覚に障がいを受けた傷痍軍人のリハビリテーションプログラムとして考案されたスポーツで、6人制のバレーボールと同じ広さのコートに、各チーム3人ずつ入り、相手ゴールを目指してボールを投げ合います。なんといっても、大きな特徴は全員が「アイシェード」という光の入らないゴーグルをつけて戦うということ。競技中は観客が声を出して応援することは許されておらず、静寂の中に響くボールの中の鈴の音、相手選手の足音だけを頼りに攻防が繰り広げられます。 東京パラリンピック・ゴールボール日本代表に若杉遥さん(平30社)が選出されました。若杉さんはロンドン、リオに続き3度目出場。パラリンピックの目標や競技の魅力などをお話しいただきました。
※このインタビューは3月初旬に行われました。

―東京パラリンピックに出場決定おめでとうございます。

ありがとうございます。ロンドンでは金メダルでしたが、リオでは5位という悔しい思いをして、その後もチームとしても個人としても思うような結果が出ず、なんとか次に向けて頑張ろうという気持ちでやってきた4年間でした。もう一度パラリンピックの舞台に立てるチャンスを掴むことができたのは嬉しいですし、代表として臨む以上は、自分を選んでいただいたことへの責任があるので、他の選手に恥じることのないようなプレーをしたいと思っています。

若杉遥さん

―東京パラリンピックでの目標を教えてください。

自国開催のパラリンピックで優勝し、金メダルを獲ることが大きな目標です。個人としては、自分がやりたいプレーをしっかり発揮して、多くの人に応援してもらえるような選手になりたいですし、ゴールボールという競技を多くの人に知ってもらえるきっかけにしたいですね。

―若杉さんが立教大学へ進学した理由を教えてください。

高校で1年間かけて社会調査をし、レポートを書く授業がありました。それがすごく面白くて、社会学を学んでみたいと思ったのがきっかけです。同時に、英語が使えるようになりたいという思いもあり、両方できる立教大学を志望しました。


―学部で興味を持っていたテーマは?

コミュニケーション系の社会学を研究している先生のゼミに入ったので、人と人、人と社会の関係にフォーカスした社会学を学びました。卒業論文では「スポーツ選手が引退した後にどのような困難を抱えるのか」といった内容の論文を書きました。現役の選手や引退した選手にお話を聞きに行ったのですが、特に立教の近くで元プロ野球選手の方がうどん屋さんをされていると知り、「立山」の横山忠夫さん(昭48法)にお話を聞いたのが印象的でした。ものすごく気さくな方で、「若杉です」と挨拶をしたら、奥様が「ああ~遥ちゃん」と、初対面とは思えない雰囲気で歓迎してくださったのです。実は横山さんは、豊島区から立教でゴールボールでパラリンピックを目指している子がいると聞いて、「豊島区の施設を使わせてあげるなど、何かできないか」と色々な働きかけをしてくださっていたそうなんです。会ったこともない学生のために協力してくださる先輩がいることを知り、本当にありがたいなと思いました。

―大学4年間を振り返っていかがですか。

すごく入りたかった大学だったので、そこで4年間勉強できたことがとても幸せでした。社会学の視点で多面的に、客観的にものを見る力を身につけることができたのかなと思います。  そもそも大学に行きたいと思った理由のひとつに、盲学校にいると人と人との関わりが狭くなってしまうと感じていて、そうした環境から脱して、色々な人と関わってつながりをつくりたいという思いがありました。この4年間で色々な経験をし、たくさんのつながりをつくることができたので、充実した時間だったと思います。



―競技の話に戻りますが、3大会連続での日本代表選出。日本のトップに居続けられている理由は?

自分がゴールボールに対して飛び抜けて才能があるとは思っていなくて、むしろない方だと始めた頃から思っています。ただ、できない、悔しいという思いをバネに、コツコツと練習を継続することはできるのかなと。今の自分に満足することなく、「どうやったらもっと強くなれるか」という思いをもち続けられているからこそ、今まで代表としてやらせてもらっているのかなと思っています。



―若杉さんがゴールボールを始めたきっかけは?

目が悪くなる前はアイスホッケーなどをやっていて、もともと体を動かすのが好きでした。中学生のときに見えなくなって、もうスポーツはできないのかなと思っていたんですが、盲学校でいろんな視覚障害スポーツがあるのを知りました。
ただ、他のスポーツは全盲と弱視で分かれていたり、一緒にやっても、弱視の選手は視力を使ってプレーをするものもあります。例えばバレーだと、弱視の選手が全盲の選手に「どこからボールが来るよ」「どこにブロックして」と指示をしたりしますし、野球も全盲の選手特有のルールがあったりします。それは平等にプレーするためだと思いますし、そのスポーツを否定しているわけではないんですが、私個人の意見としては、それがあまり好きではなくて。同じ視覚障害なのに、なんで見えている人と見えない人の差ができちゃうんだろうと。
そのスポーツはそのスポーツで楽しかったんですが、疑問があって。ゴールボールはコートに入る全員がアイシェードをして、視覚の面では全く平等にできるということを知って、面白いなと思い、中学3年生から始めました。普段、私のようなほとんど視力がない人が日常生活を送るときは、やはり道を歩いていても、何かにぶつかるんじゃないかとか、気にしながら生活しています。
でも一旦ゴールボールのコートに入ってしまえば、皆がアイシェードをして、視力がない状態で戦います。プレー中はベンチからの指示出しも禁止されているので、平等な世界で、周りから何かを指図されることなく、自分たちで考えてプレーができるところがゴールボールの魅力の一つだと思っています。自分たちの意志で、動いて、投げて、とって、自分たちで考えて組み立てられるのが面白いですし、コートで動いているときは楽しいです。



インタビュアーに答える若杉さん
インタビュアーに答える若杉さん

―初めてゴールボールを観るという方もいると思います。試合観戦を楽しむためのアドバイスをお願いします。

どのチームも、ただ単にボールをとって投げているわけではなくて、何かしらの目的があって、その位置に狙って投げていると思います。「どこを狙って投げているのかな」とか、「ここにボールを集めているということは、ここで点をとりたいのかな」という感じで、考えながら見ていただくと、より面白さが伝わるのかなと思います。 それから、音の駆け引きも他のスポーツにはない面白さだと思います。相手も音を頼りに動いているので、投げない人がフェイクをして違う音をさせると少し反応が遅れます。あとは、転がすボールとバウンドさせるボールを使って、相手のディフェンスのタイミングをずらすなどの戦略もありますので、そういった部分も注目してもらえると嬉しいです。

―ありがとうございました。東京パラリンピックで若杉さんの活躍する姿を見られることを楽しみにしています。


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