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立教うんちく話

第52回『本館70年ぶりの大修理』

1994年(平成6年)、関東大震災以来70年ぶりに本館の本格的修理が行われました。

これは、老朽化が進む屋根瓦の葺き替えと外壁のレンガ補修が目的の補修工事でした。

外壁補修においては、絡みつく立教シンボルのツタの保存が条件となり、ツタの性質を考えたうえで施工時期やツタの脱着方法が吟味されました。

本館をはじめとするレンガ造建物に用いられている赤レンガは、「ホフマン式輪環窯」という独特な色調が醸し出せる窯で、大正期に製作されたものです。

今回の補修では、一部の痛んだレンガのみを交換するため、既存のものと同じかたち、色が要求されました。

旧式で人の手間がかかり、なお煤煙濃度が基準値を大きく上回ってしまうホフマン窯は、日本にはもはや現存せず、次に目を向けた韓国でも農村地など僻地で探すしかなく、窯場探しは困難を極めました。

そうして、ようやく探し出した窯場は、韓国中東部に位置する慶北永川郡の農村集落から、車で20分ほど入った山間にありました。

しかし、その窯でできるレンガも色はよいものの、表面の仕上がりが粗く、割れ欠けが多く、そのままでは採用できないものでした。

改善を求めて韓国側と協議を続けるも、彼らのレンガに対する感性(多少の割れ欠けがあるものが味わいがあってよい)と、精度の高いものを求める学校サイドとの隔たりを埋めることは困難でした。

協議の結果、原料の粘土に含まれる不純物のために割れ欠けが生じていることから、国産の焼成前の半製品のかたちで韓国に持ち込み、焼くこととしました。

そうして、国際色豊な日韓共同作製のレンガが完成しました。

納品されたレンガはどれも完成度が高く、満足のいく仕上がりとなったそうです。

現在、本館をじっと見ていても、どこが新しく補修された箇所なのかわかりません。

もとの、赤レンガの風合いを壊すことなく、新しいレンガを組み入れていくことは、想像しただけでも困難な作業に思われます。

この難作業に当たられた全ての方々に敬意を表したい、そう思ううんちくでした。


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