視点
経営学部 辻洋右教授に聞く
経営学における国際認証とリーダーシップ教育
立教大学経営学部・大学院経営学研究科は、2024年8月、 世界的なビジネス教育の認証評価機関「AACSB」(※1)よ り国際認証を取得しました。その意義や、認証がもたらす効果 について、経営学部国際経営学科の辻洋右教授に伺いました。


教育・研究の質を保証する権威ある国際認証を取得
AACSBとは1916年にアメリカで設立された、世界で最も長い歴史を持つビジネス教育の国際認証評価機関です。ビジネススクール(※2)における教育・研究の質を保証し、認証を維持するには6年ごとの再審査に合格しなくてはなりません。その歴史と厳格な認証プロセスから、同分野における認証評価機関の中でも特に権威があるとされ、認証校は世界のビジネススクールのわずか6%程度。国内で学部が認証を取得するのは4校目で、学部・研究科単位の取得は私立の総合大学では日本で初めてです。海外では
広く認知されており、進学や留学、就職などにおける判断基準の一つとなっています。
2006年に開設した経営学部・大学院経営学研究科は、グローバル社会でリーダーシップを発揮できる人物を育む教育・研究を推進し、社会から高い評価を得てきました。2015年から認証取得に向けた準備を開始し、自己点検評価書の作成とフィードバック、査察団による訪問といった厳正な審査を経て、今回の認定に至ったのです。
特色あるリーダーシップ教育とSA制度が高評価
AACSBには9項目の審査基準があり、特に「ミッションに基づく戦略マネジメント」と「学修成果の測定・改善プロセス」「研究と社会的インパクト」が重視されます。経営学部では、「革新的かつ責任あるソリューションを提供できるビジネスリーダーの創出」というミッションの下、経営学教育を通した「高い倫理観」「リーダーシップ」「コミュニケーション能力」の育成・強化を掲げ、厳しい審査基準をクリアしました。
中でも高い評価を受けたのが、経営学科の「ビジネス・リーダーシップ・プログラム(BLP)」、国際経営学科の「バ
イリンガル・ビジネスリーダー・プログラム(BBL)」という、プロジェクト型授業のリーダーシップ・プログラムです。また、SA(スチューデント・アシスタント)制度も、その有用性を認められました。BLPとBBLでは履修生よりも高年次の学生がSAとして、授業の計画、実施、振り返り、改善を教員と共に担当。SA自身もリーダーシップを実践的に学ぶことが可能です。一人のカリスマが集団を率い
るのではなく、チーム全員が柔軟に互いの強みを生かし合う。そうした「立教型のリーダーシップ(※3)」は、VUCA(※4)といわれる複雑で不確実な時代において、より有効に機能するものと考えています。
今回の認証取得によって、経営学部・大学院経営学研究科の教育・研究が世界水準であるという評価が得られたといえるでしょう。すでに海外の認証校から提携のオファーが届いています。同時にわれわれ教員に対して、さらに高いレベルの教育や研究が求められることとなり、身が引き締まる思いです。認証取得を通じて確立したPDCAサイクルを常に機能させ、日本の経営学をリードする大学を目指して改革を加速させていきます。
※1 AACSB:The Association to Advance
Collegiate Schools of Business ※2 AACSBの認証評価対象としての「ビジネススクール」は、ビジネスや経営管理に関する正規の学位プログラムを提供する高等教育機関を指す。 ※3 立教型のリーダーシップ:リーダーシップ教育は経営学部を起点として全学的に広がり、その一環であるグローバル・リーダーシップ・プログラム(立教GLP)は全学部の学生が履修できる全学共通科目の一つ。 ※4 VUCA(ブーカ):Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の4つの頭文字を取った言葉。未来の予測が困難な状態。
季刊「立教」VOL.271より転載していま

辻 洋右(つじようすけ)
慶應義塾大学法学部卒業後、フロリダ大学にてMaster of Exercise & SportSciences 取得。
テキサスA&M 大学にてDoctor of Philosophy 取得。
ワシントン州立大学専任講師、琉球大学准教授などを経て、2014年立教大学に着任。
2019年より現職。AACSB 認証取得に関わる委員会の主担当を務める。
専門分野はスポーツマーケティング。