Alumni Special Interview
大野拓朗さん✖南沢奈央さん✖松田正隆教授
立教の教員がかつて手掛けた戯曲で 校友二人がダブル主演

校友である俳優の大野拓朗さん(平24ス)と南沢奈央さん(平25映)が主演を務めた舞台『海と日傘』が、2025年7月9日から21日まで、すみだパークシアター倉で上演されました。本作は、劇作家・演出家である現代心理学部映像身体学科 松田正隆教授の代表作で、1996年に第40回岸田國士戯曲賞を受賞しています。立教に縁の深い舞台にかける思いやお互いの印象について、演じたお二人に話を伺いました。
―お二人は今回が初共演だそうですが、ダブル主演が決まった時の心境を教えてください。
南沢:私は拓朗さんの1学年下ですが、これまでお会いする機会がなくて。同じ立教出身として以前から意識はしていたので、やっとご一緒できてうれしいです。しかも、偶然にも立教の松田先生の作品ということで、不思議なご縁だなと感じました。
大野:奈央さんは在学中からすでに活躍されていて、何度か学食でお見かけしたことはあります。「南沢奈央来てる!」と周りがざわざわしていたので(笑)。僕も大学2年の終わりにデビューし、いつか共演できたらと思っていたのですが、15年経ってようやく念願がかないました。松田先生を含めた全員が、新座キャンパスの学部なのも珍しいですよね。
南沢:そうそう、より親近感が湧きますよね。そんな共通点もあってか、お会いした瞬間に、「あ、ほっとできる人だ」と思
って。夫婦役を演じる上で、とても心強かったです。
大野:光栄ですし、僕も全く同じ印象でした。奈央さんに限らず、立教出身の方はどこか空気感が似ていて、通じ合うものが
あるような気がします。
―演じる立場から見た、松田正隆教授の作品の魅力とは?
南沢:松田先生は、日常のさりげない会話や時間の流れを描く、いわゆる「静かな演劇」を得意とされる方。描写やセリフの一つ一つに深みがあって、個人的に好きな雰囲気の作品ですね。
大野:この戯曲を30代前半で書かれたなんて、月並みな表現ですけど「天才なんだな」と。登場人物たちが話す言葉にそ
れぞれの人生がにじみ出ていて、「このセリフはどういう意味なんだろう?」と考えさせる余白もあるんですよ。
南沢:演者に委ねる感じがあって、読み解いていく作業も楽しいですよね。
大野: 本当に。演じる人や解釈によって印象ががらりと変わる作品だからこそ、「自分た
ちの『海と日傘』をつくり上げたい」と思わされますね。
―立教大学での学びが、今に生きていることはありますか?
南沢:私は映像身体学科出身なので、直接生きていることはたくさんあります。特に、さまざまな角度から「表現」と人の「心理」の関係について学べたのは良かったですね。「撮影や演出の仕方によって、受け取り方がどう変わるのか」とか。
大野:いいなあ、そんな授業。受けてみたい!
南沢:楽しかったですよ。実は入学当初、お仕事を続けることに迷いがあったんですけど、「やっぱりお芝居がやりたい」と思えたのは、ひとえに立教での学びのおかげです。
大野:僕はスポーツウエルネス学科でしたが、スポーツ心理学を学んだのは特に有意義でしたね。「本番で力を発揮するために、いかにメンタルをコントロールするか」が大事なのは、スポーツ選手も俳優も同じなので。あとは、体の仕組みや栄養に関する知識も、役に向けた体づくりやアクションに役立っています。
―校友の皆さんへのメッセージをお願いします。
南沢:立教大学で学んだことは私の誇りですし、校友の方々が社会のあちこちで活躍されていると思うと、自分も励まされる気がします。大好きな立教の名に恥じぬよう、これからも精一杯頑張ります!
大野:これまで多くの校友の方々にお会いしましたが、親身になって応援してくださる方ばかりで。そんな皆さんに「あの人も立教なんだよ」と誇りに思ってもらえるよう、今後も挑戦を続けていきたいです。
―原作者のコメント
30年ほど前に書いた戯曲が、今回、新たな演出で上演されるのはとてもうれしいことでした。先日、私も観劇しましたが極めてシンプルな舞台で、俳優の方々の抑制された演技に息をのみました。とりわけ本学の卒業生である主演のお二人、大野拓朗さんと南沢奈央さんの存在が、この劇を静謐な会話劇にしていると感じました。
現代心理学部映像身体学科 松田正隆教授

12013年現代心理学部映像身体学科卒業。2006年、高校1年の時に連続ドラマでデ ビュー。
テレビや舞台、ラジオなどで活躍する傍ら、読書・落語鑑賞という趣味を生かし、
書評・エッセーの連載や落語番組の司会なども担当。
2023年には初のエッセー集『今日も寄席に行きたくなって』(新潮社)を出版。

2012年コミュニティ福祉学部スポーツウエルネス学科(当時)卒業。
大学在学中の2010年に俳優デビュー。
多数の映画・ドラマや舞台に出演し、2019年からは7カ月間のアメリカ留学を経験。
2023~2024年には、ロンドンで全編英語のミュージカル『Pacific Overtures (太平洋序曲)』に参加。

舞台『海と日傘』
作:松田正隆 演出:桐山知也 プロデューサー:佐藤玲
長崎に住む一組の夫婦。
作家の夫・佐伯洋次(大野拓朗)と、余命3カ月を宣告された妻・直子(南沢奈央)。
二人の間に静かに流れる時間、暮らし。
身近な人々との他愛もない毎日の中で、夫婦は当たり前の日々を過ごしていく―。