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Alumni Special Interview 

株式会社ポケモン 執行役員
福永晋さん(平4経)

ポケモンと共に歩んで25年。「人間力」でアジア市場を切り拓く

福永晋さん

世代や国、言語の壁を超えて多くの人々に愛されている「ポケットモンスター」、通称「ポケモン」。そのブランドマネジメントを手掛け、世界有数の人気コンテンツに育て上げた会社が株式会社ポケモンです。創業時からのメンバーであり、現在はア ジア市場の開拓を一手に担う福永晋さんにお話を伺いました。

ポケモンの「行商人」としてアジア全土を飛び回る

 大学卒業後、新卒で入社した株式会社リクルートを退職し、今の会社に入ったのがちょうど25年前。社員数は当時30人足らずで、後にここまで世界規模のビジネスを展開する企業になるとはみじんも想像していませんでした。ただただ潰れないよう必死で頑張って、気が付いたら四半世紀。図らずも、ポケモンの歴史のほとんどを共に歩んできたことになります。
 私たちの使命は、ゲーム・カードゲーム・グッズ等の販売やライセンスビジネスを通じて、ポケモンブランドを支え、進化させ続けること。中でも私は現在、アジアマーケット開拓の最前線に立ち、国や地域に応じた多彩なプロモーションを行っています。欧米ではすでに確固たる人気を誇るポケモンですが、実はアジアにはまだ認知度が低いエリアも。アジア全土でポケモ ンを根付かせるため、年間200日以上は海外を飛び回り、商談に臨む日々を送っています。

個ではなくチームのために。今も胸に刻む恩師の教え

 「田嶋幸三さんが立教のサッカー部でコーチをやる。素晴らしい人だから面倒を見てもらえ」。サッカー少年だった私は、高校時代の監督の言葉に背中を押され、立教大学へ進学しました。正直、熱心に勉強したとは言えず、思い出すのは富士見総合グラウンドでボールを追った記憶ばかり。仲間と共に汗と泥にまみれた日々を過ごしました。
 後に日本サッカー協会(JFA)会長を務める田嶋さんには、本当にたくさんのことを教わりました。当時の私は自分本位なプレーが多く、「一人が好き勝手やってチームになるか!」と雷を落とされたことも。組織やチームとしての戦い方は、この時に身をもって学んだように思います。ちなみに、JFAとポケモンは2020年に子どもたちへのサッカー普及を目的としたアライアンスを締結しています。当社の担当は別の社員でしたが、会長だった田嶋さんから「福永は記者発表に来ないのか?」と言われ、急遽駆けつけることに。大学時代の恩師と仕事で再び巡り合えたことは大変うれしく、発表の場で肩を並べた時は思わず胸が熱くなりました。

次なるターゲットは14億人の巨大市場・インド

 最初の就職先に(株)リクルートを選んだのは、圧倒的に人が魅力的だったからです。求人広告の営業として働き、表彰もされるほど成績は好調でしたが、次第に「新しいことに挑戦したい」と思うように。そうした中で、当時リクルートに在籍し、後にJリーグのチェアマンになる村井満さんとの面談がありました。そこで紹介してもらったのが、ポケモン関連の業務に携わっていたグループ会社。そこでキャラクタービジネスの面白さを知り、2年後に(株)ポケモンが発足したタイミングで転職を決意、現在に至ります。
 これまで台湾や香港、インドネシアなどで新たな市場を切り拓いてきましたが、目下、力を入れているのはインドです。14億人の巨大市場ですが、主要言語だけでも20言語以上。文化も商習慣も何もかもが日本と異なり、難易度の高いエリアであることは否めません。どうすれば、インドの人々にポケモンを愛してもらえるか。国民的スポーツであるクリケットのプロチームとの提携やリアルイベントの推進などを通して、粘り強く知名度の向上に取り組んでいます。

インドネシアでのイベントにて。民族衣装を着たピカチュウと

「子ども」のようなポケモンを託せる相手かを見極める

 長年関わってきた仕事の中でも特に思い入れが強いのは、ポケモンが描かれた「ピカチュウジェット」でおなじみの「そらとぶピカチュウプロジェクト」です。「コロナ禍の中、ポケモンらしい貢献ができないか」。そうCOOに打診され、考え抜いて生まれたのがこの取り組み。「人々が再び動き出すきっかけをつくろう」と、2021年より航空会社や空港、観光地と連携して旅の楽 しさを提供。今ではアジア各地にコラボレーションの輪を広げています。
 日々の商談で大事にしているのは、「フェース・トゥ・フェース」。ポケモンは、原著作権者の方々が生み出した子どものような存在なので、我々としても信頼できない相手には預けられません。「この人はポケモンで商売をしたいだけだ」と感じたら、どんなに高額な条件を提示されても断ります。そうした雰囲気は、実際に顔を合わせなければ分からないもの。だからこそ、大事な「子ども」を託せる相手かどうか、必ず自分の目で見極めるようにしているのです。
 英語はほとんど話せない私ですが、誰よりも取引先の人々と打ち解ける自信はあります。アジアは家族的なつながりを 重んじる土地柄なので、懐に入れば本当に良くしてくれる。最終的に「やって良かったよ」と言われた時は、日本人同士とは一味違う達成感がありますね。もちろん、現地のポケモンファンの存在も大きな励み。アジアには娯楽自体が少ない地域もあるため、イベントで子どもたちが目を輝かせている姿を見ると心からうれしくなります。

Webサイト

福永さんが発案、主導した「そらとぶピカチュウプロジェクト」。
コロナ禍で分断された世界を再びつなごうと航空会社や観光地とコラボし、
さまざまな仕掛けが施された

©2025 Pokémon.
©1995-2025 Nintendo/Creatures Inc. /GAME FREAK inc.
ポケットモンスター・ポケモン・Pokémon は任天堂・クリーチャーズ・ゲームフリークの登録商標です。

立教卒業生の人脈は大きな財産

 (株)リクルートでは新人の頃に人脈の大切さを叩き込まれましたが、事実、多くの縁に導かれ、現在の自分があると言っても過言ではありません。仕事で立教の卒業生と出会うこともありますが、大学の規模が大きすぎないせいか、とりわけ親近感を覚えますね。立教出身者は人がいいし、協調性もある。そうした人間的に素晴らしい人々と濃い関係を築けたことは大きな財産ですし、立教生で良かったと実感します。これからも「縁」を大切に、ポケモンがもたらす夢とワクワクを世界中の人に届けるべく、力を尽くしたいと思います。

さん
福永 晋(ふくながすすむ)
1969年生まれ。東京都出身。
1992年立教大学経済学部経営学科(当時)を卒業、
同年株式会社リクルートへ入社、1998 年より株式会社メディアファクトリーへ出向。
2000 年に株式会社ポケモン入社。
現在は執行役員として、ビジネス本部インドマーケティング室、
アジア事業本部アジアセールスデベロップメント部を担当。

● 取材後記

陽気で人懐っこくて、ちょっとおちゃめなピカチュウは、まさしく福永さんそのもの!1年の半分以上、東南アジアを駆け巡る姿に、「そらとぶピカチュウジェット」が重なります。そのエネルギーは、体育会サッカー部で培われたチャレンジ精神と行動力でしょうか。各国のイベント開催を楽しそうに語る様子は、「目の前の子どもたちの笑顔が醍醐味です!」という言葉がぴったりでした。町田香子(昭55法)

福永さんとは仕事上で約25年前に知り合いました。久々にお会いしましたが、当時と変わらぬチャレンジ精神で活躍されていてうれしく思いました。福永さんは今のビジネスをする上で、さまざまな人との「縁」の大切さを述べられていました。本学では校友同士の「縁」や「絆」を表す言葉として、よく「立教ファミリー」と表現されますが、福永さんのお話を伺い、「立教ファミリー」の重要性を再認識することができました。奥本昭彦(昭62社)

株式会社ポケモンに勤務している先輩を知ったのは、昨年の日経MJでした。ポケモンの伝道師として世界中を飛び回る素晴らしい仕事をしているのが立教の先輩とは!知り合いのポケモン役員を介して福永さんを紹介してもらい、お会いする機会をいただけました。今回の取材も一度は断られましたが、2回目のトライでOKをもらえたのはやはり立教の精神がベースにあるからでしょうか(笑)。皆さんも先輩後輩同級生との縁を大切に、旧交を温めてください。高山真理奈(平9国比)

いずれも会報委員

さん
取材後の1枚。福永さんと会報委員

文/WAVE 写真/木内和美


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