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    木村 研一さん(平3経)
    インタビュー

Alumni Special Interview 

デロイト トーマツ グループ CEO
木村 研一さん(平3経)

グループの総合力を最大限に発揮し、唯一無二の会社へ。

木村 研一さん監査、税務、法務、コンサルティング、ファイナンシャルア ドバイザリーなどの機能を備え、約2万人の社員を擁するデロイトトーマツグループ。国内最大級のプロフェッショナルファー ムで最年少のグループCEOに就任した木村研一さんに、大学時代の思い出や現在に至る道のりなどを伺いました。

スキーに明け暮れていた大学時代

 「立教大学に入学した時、あまり高い志はなく、偶然合格したので入学したのが正直なところです(笑)。経済学部経済学科を選んだ理由も、受験日程がたまたま合っただけで明確なビジョンがあったわけではありません。だから入学後も勉強に熱心ではなく、「アルンダー基礎スキークラブ」というサークルでスキーに熱中する日々。冬は大学の試験期間を除き、ずっとスキー場にこもっていました。長野県のスキー場にある旅館に寝泊まりし、昼間はスキー教室のインストラクターのアルバイトをして過ごすんです。その間、4回ほどサークルの合宿があり、仲間とスキーを満喫。シーズンオフも、ランニングや筋トレなど陸上トレーニングに励みました。
 このようにスキーに熱を上げていたせいで、学業成績は芳しくなかった。このままでは就職が危ういと思って4年次から公認会計士の勉強を始めたんです。予備校が結構高く、うちは裕福でなかったので何年も浪人するわけにはいかず、必死に勉強しました。幸いにも1年数カ月の勉強の末、合格できました。


離れたから分かったトーマツの強み

 大学を卒業した1991年に監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)に入社しました。公認会計士として登録されるには、当時は3年以上の実務経験が必要で、かつ三次試験があったんです。94年に三次試験を突破し、 95年に晴れて公認会計士に登録されました。
 社会人になってからも、冬になると週末はスキーばかりやっていた記憶があります。当然、将来CEOにな るとは全く思っておらず、しかも96年に一度トーマツを辞めてしまったんです。尊敬していた上司が個人事務所を立ち上げることになり、間近で学べるならよい機会だと思ってついて行ったんですね。
 その事務所は企業の上場やM&Aのサポートを主業務としていました。そのような事務所は当時珍しく、とても貴重な経験だったのですが、4年で退社することに。個人事務所だと、どうしても仕事のスケールに限界を感じてしまって。そんな時にトーマツに新しい部署ができ、大規模なプロジェクトに参加しないかと声を掛けてもらい、再入社することになりました。
 ただ、個人事務所で働いた経験は非常に大きかったと気付きました。小さな事務所だったからこそ、トーマツのような大手の長所がよく理解できたんです。それは多彩な機能があり、相手の課題に合わせてソリューションを組み合わせて提案できること。再入社後は、こうした強みを全面的にアピールした営業活動を懸命に行いました。トーマツでは基本的に会計士が自ら営業を行います。顧客の悩み相談に乗って、多角的にソリューションを提案し、大型案件の受注につなげる、というのが私の営業スタイルでした。同じような形で営業を行っている人は他におらず、これが功を奏したのです。前職で幅広い領域を担当していたので、何を聞かれても大体のことは分かるという自信が 付いたのも大きかったですね。監査や上場、M&Aのサポートなどを行いました。1つ大きな案件を担当すると、その会社にかなり詳しくなるので、また別の依頼が来ることが多いんです。その繰り返しであっという間に時が過ぎていきました。


発祥の地で学んだ最先端の知見

 2012年からはリスクアドバイザリーの業務に乗り出しました。顧客企業がリスクに対応できるようコーポレートガバナンスやレギュレーションを整備する仕事です。最初は10人くらいの部署でしたが、時代とともにサイバーリスクなどリスクが多様化し、ニーズが高まっていきました。今では約2500人の組織に成長しています。
 14年から1年間、ロンドン事務所に勤務したことは得難い経験です。もともと公認会計士や会計事務所という存在はイギリスが発祥です。会計事務所の経営という観点では日本より100年以上進んでいます。さまざまなビジネスモデルを開発し、顧客との深いつながりをいかに長く構築するかという仕組みを常に考える。先端の手法や考え方を現地の方に聞いて回り、学んだことを日本に持ち帰りました。それと併せて、帰国後に注力したのがサイバーセキュリティーの分野です。すでにチームとしては機能していたのですが、19年に別会社にして代表を務めることに。その分野に詳しい人を中途採用したり、スペシャリストが評価される仕組みを作ったりと手を尽くしました。 大きな賭けでしたが、ニーズの高まりは感じていたので……。今では300人以上の業界最大手の組織になりました。

多彩な機能を組み合わせ価値を提供する

 そして22年、グループCEOに就任することに。私は全くやるつもりはなかったのですが(笑)。CEOの選出には推薦委員会があり、そのメンバーがパートナー(上級役職者)に、「誰が向いているか」といったことをヒアリングするんです。そうして絞り込まれた候補者に推薦委員会がインタビューをし、最終的にパートナー全員の信任投票を経てCEOが決定します。グループCEOに就任した時に感じたのですが、若い時に1度トーマツを辞めて再入社した時の気持ちとあまり変わっていないんですよ。それは「総合プロフェッショナルファームとして、多彩な機能をいかに組み合わせて価値を提供するか」ということ。現在、当グループでは「監査・保証業務」、「リスクアドバイザリー」、「コンサルティング」、「ファイナンシャル アドバイザリー」、「税務・法務」という5つのビジネスを行っています。各分野でピカピカに磨き上げられたプロフェッショナルたちが活躍していますが、横断的なビジネスを実現できると楽しいし、やりがいを感じます。1つひとつの領域では競合が存在しますが、組み合わせると唯一無二の会社になれると思っています。


立教での経験や学びが大きなベースに

 立教のスキー仲間とは今でも仲良く交流しています。私がグループCEOになった時も特にリアクションはなく(笑)、フラットな関係が心地良いですね。こうした関係を築けたのも、スキーという活動の特性かもしれません。冬に「山ごもり」をすると一緒にいる時間が長いので、本当にいろんな話をするんです。お互いのことがよく分かるし、自分と異なる考え方にも触れられる。今の自分のベースができたのはこの時かもしれません。立教で学んだことで印象に残っている言葉として「人にしてもらいたいと思うことを、人にもしなさい」という聖書の一節があります。「キリスト教概論」で 教わりましたが、この考えはプロフェッションの基本になりました。
 大学時代は会計士の試験以外あまり熱心に勉強しなかったのですが、その反動なのか就職してからいろいろな勉強をするようになりました。中小企業診断士や宅建士、情報処理などの資格を取得し、今は趣味でマルク ス経済学や行動経済学を勉強しています。今後「デロイトユニバーシティ」という社員の研修施設を作ろうと計画中です。ビジネスに関わる知識やスキルを学べる場ができるといいなと思っています。
文/WAVE 写真/木内和美


木村 研一さん
木村 研一(きむら けんいち)
公認会計士。1991年本学経済学部経済学科卒業。同年監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)入社。2000年再入社。2015年から2021年までデロイト トーマツ リスクアドバイザリー ビジネスリーダー、デロイト トーマツ サイバー合同会社代表執行者。2022年6月よりグループCEO

木村 研一さん

スキーに明け暮れていた学生時代の1枚。後列、右から3番目が木村さん


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