Alumni Special Interview
2022年4月 法学部国際ビジネス法学科グローバルコースがスタート!
22年4月より、法学部国際ビジネス法学科内にグローバルコースがスタートしました。同コースは1学年最大38人の少人数で、卒業に必要な専門科目をすべて英語で学ぶことができます。コース長を務める髙橋美加法学部教授に、コースの特徴や学びの内容について伺いました。
日本語が全く話せない同級生がいる環境
これまでも国際ビジネス法学科では、英語による授業を行っていました。しかしながら、教員も学生も日本人なのに使用言語は英語という状況には一種の気まずさがあり、わからなくなるとつい日本語に頼りがちであったのも事実です。法学の授業としてはそれでよくても語学力の育成としてはどうでしょうか。国際ビジネスを扱う授業として
は本来法学の知識と語学力は車の両輪のはずでした。しかし語学力は、やはり、やらざるを得ない状況に追い込まれないと身に付かないんですよね。そういった環境にするために、例えば日本語が全く話せない同級生がクラスに1人でもいれば、コミュニケーションをとるために全員が英語を話すことになるのではないでしょうか。こうして法学部として22年9月からP※EACEprogramの学生を受け入れることにしました。日本語の話せない留学生にも学位が出せるだけの十分な数の授業を展開し、教室を国際ビジネスの世界の縮図に少しでも近づけたい。これがグローバルコース設置理由のひとつです。
※PEACE Program:22年9月から始まる外国人留学生受け入れ制度。入学時点で日本語能力を求めず英語による授業のみで教育課程を構成します。同プログラムのほか、NEXUSProgramもスタートします
グローバルコース生のみが履修可能なLegal Presentation、Legal riting
グローバルコースの学生は1年次にLegal PresentationやLegalWritingを受講します。春学期は法的な話題を英語でプレゼンできるように、秋学期はさらにそれを文章として表現できるようにすることを目指し、レベル別に2クラスに分けた少人数で徹底的に学びます。私の感覚ではアカデミックな英語を学ぶ際に最も難しいことは「書く」ことです。日常会話ではなく論理的に、また独特の作法で文章をまとめるには、相当の訓練が必要です。もちろん最初から難しい法律用語を用いるわけではなく、例えば英字新聞の法的な話題など簡単なトピックから始めます。 英語を読んで、説明して、文章にすることを1年次から丁寧に教え、2年次以降はさらにレベルアップした内容を指導してい く予定です。
対立の本質を見極め、着地点をみつける法学部の学び
グローバルコースでは、「交渉学(Negotiation Basics)」という授業も開講しています。これは定められたテーマについてチームで調べて交渉ロールプレイを行う授業で、学生にとても人気があります。交渉はビジネス
に限らず、日常のさまざまな場面にあり、例えば隣家の庭の木の枝が伸びて自分の家の庭に入ってきてしまったらどうするかというような近隣トラブルでも、これを勝手に切ってよいのか、伐採費用はどうするかなど、いろんな切り口があるでしょう。法的な知識をベースにさまざまな選択肢を多角的に検討し、交渉に結びつけることが、法学部ならではの学びなのです。
交渉学に限らず、法学部の学びでは、日々生じる争いごとについてその背景を考え、対立の本質を見極めたうえで着地点を見つけることが大切です。グローバルコースでは、国際的なビジネス活動で生じる法律問題を多く取り上げる予定です。それは狭い意味におけるビジネス取引のみならず、地球環境や労働問題など様々な分野にまたがることになるでしょう。学部生のうちに英語でそういった話題に数多く触れることは、国際取引を行う企業や国際機関への就職もしくは他国の大学院に進学する際に活きてくるのではないかと考えています。
日本の法学を世界へ発信していきたい
本来法律はそれぞれの国の言葉で書かれ、それぞれの国において適用されるドメスティックな性質のものです。それをあえて英語に訳し、英語で授業するという試みは学部レベルでは非常に珍しい取り組みです。だからこそ私たちはグローバルコースの設置を通して、日本の法学を世界へ発信する拠点として貢献したいという思いがあります。
実は日本は他のアジア諸国で法整備支援をしていて、法学部教員にもベトナムやラオスの法整備にかかわった経験のある者がいます。一方で、日本の法学は主に語学の壁からあまり世界へ発信されておらず、知の共有・発信という面で大きな課題がありました。現在の日本の法律は、明治期に西洋の法体系を取り入れたものですが、数多くの事例が蓄積されて独自の発展を遂げてきました。先人たちが長い年月をかけて育ててきた日本の法学を世界に発信していくためにも、このグローバルコースで日本の法学を英語で学び、英語で発信できる学生たちを育てていきたいと考えています。