Alumni Special Interview
RIKKYO marché 東京でモノづくり」をする卒業生
立教人が営むお店が全国各地にあります。今回は東京でこだわりをもって、モノづくりをする卒業生を紹介します。
※全国各地の卒業生のお店はこちらからご覧いただけます。
―作り手が楽しんでいることそれが相手にも伝わる。
苔色工房 陶芸家田中遼馬さん(平20日文)
北池袋駅を降りて住宅街を進んだところにひっそりと佇む苔色工房。ここで作り出されているのは、動物があしらわれた優しいデザインの器たち。作品と同じようにあたたかな雰囲気をまとう田中遼馬さんが一つ一つ丁寧に作り出す器は、海外でも販売されるほど今人気が高まっている。
━陶芸との出会いはいつですか。━
大学で陶芸部に入ったことが、間違いなく今の自分につながっています。もともと絵を描いたり、物を作ったりすることは好きだったので、大学に入ったら何か物を作るサークルに入りたいと思っていたのですが、必ずしも陶芸をやりたかったわけではありませんでした。たまたま陶芸部に声をかけてもらって。陶芸部の窯や工房は13号館の裏にあるので、声をかけてもらわなければ辿り着かなかったと思います。そんな風に偶然出会った陶芸の面白さに、どんどん引き込まれていきました。
━陶芸部ではどのような活動をされていたのですか。━
陶芸部は本当に自由なサークルなんです。好きな時に来て、好きな時につくる。人によっては1カ月に1回くらいしか来ない人もいましたが、私は毎日のように13号館裏のプレハブで作品を作っていました。毎年益子焼で有名な栃木県の益子町で合宿をするのですが、この合宿もまた自由。4泊か5泊の合宿にいつ来ても、いつ帰ってもいい。もちろん私は合宿の最初から最後まで参加しました。授業はサークルの合間に出ていたような感じです。日本文学科だったのですが、小峯和明先生の絵巻物の授業が思い出に残っていますね。やはり、絵とか芸術といったものが好きだったんだと思います。
━卒業してすぐに陶芸家の道に進まれたのですか。━
いえ、卒業後はウェブデザインの会社で働いていました。6、7年くらいはフルタイムで働いて、仕事の合間に作品を作るという生活でした。徐々に陶芸の仕事が安定してきたので、ウェブデザインの仕事を減らしていき、ここ1、2年で陶芸一本でやっていくことを決心しました。最初は不安もあったのですが、徐々に安定的にお仕事をいただけるようになりました。今、1日に最低でも10個くらい、年間にすると3,000個くらいの作品は作っています。ありがたいことに1年くらい先まで予定が埋まっている状況です。2020年12月末には台湾でも個展を開催しました。
━―田中さんの作品へのこだわりを教えてください。━
陶芸には色々な手法があり、私の作品は型を使って成型し、鉄分などの化粧土を掛けて色を付け、絵柄の部分を削るという方法をとっています。技法自体は伝統的な鼠志野茶碗と同じ掻き落としなのですが、作品は全く異なるものに仕上がっていると思います。陶芸の技術は基本的には全て独学で学びましたね。美大を出たわけでもない、誰かのもとで修業をしたわけでもないというのは珍しいと思います。納期が迫っていると、窯の焼き時間に合わせて寝起きせざるを得ないときもありますが、好きな陶芸を仕事にすることができて、今とても楽しいんです。私のこだわりは、「自分自身が楽しんで作ること」だと思います。自分が楽しんで作っていれば、それが作品にも反映されて、お客様にも伝わるのかなと。そして、お客様にも楽しく使っていただけたら一番うれしいですね。
「楽しいですよ」と笑顔で話す田中さんからは、いかに一つ一つの作品に愛情を込めて作っているかが伝わってくる。だからこそ、田中さんの作品からは心地よい温かみを感じるのだろう。苔色工房の器はWeb Shopなどで購入いただけます。