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Alumni Special Interview

RIKKYO marché 「東京でモノづくり」をする卒業生

立教人が営むお店が全国各地にあります。今回は東京でこだわりをもって、モノづくりをする卒業生を紹介します。
※全国各地の卒業生のお店はこちらからご覧いただけます。

    内田さん
    立教マルシェ

―大規模でないからできること。常に工夫して、いかにこだわるか。
(株)内田染工場 代表取締役社長 内田光治さん(昭60経)

文京区の閑静な住宅街に、もくもくと水蒸気が立ち込める一画がある。創業112年目を迎える内田染工場だ。縫製された衣料品を染める「製品染め」に特化した工場で、有名ブランドからも発注を受けるという。市場が縮小している国内の染色業界において、選ばれ続ける秘訣は何か、社長の内田光治さんに話を聞いた。

内田さん
「(株)内田染工場 代表取締役社長 内田光治さん(昭60経)」

━内田さんは小学校から立教とのことですが、どのような学生時代を過ごされたのですか。━
はい、立教小学校の22回生です。小さい頃は自宅と工場が一体となっていたので、職人さんたちにたくさん遊んでもらいましたね。当時は靴下を染める仕事が多かったので、靴下を裏返すお手伝いなども当たり前にやっていました。高校でゴルフ部に入り、大学でもゴルフサークルに入ったのですが、夏休みは合宿やらトーナメントのアルバイトやらでずっとゴルフ場にいました。授業がある期間はもちろん池袋に通っていましたが、マルイの裏にあった喫茶店に友達が入り浸っているんです。通学途中で呼び止められてしまってなかなかキャンパスまでたどり着かない、そんな毎日を送っていましたね。

内田さん
「サンプル染めは最新機器を使って緻密に。まさに化学実験のよう」

━お仕事のことについて教えてください。━
今年で創立112年目となり、私で3代目です。私が幼少の頃は靴下染めを多く請け負っていて、その後徐々に衣服へと事業を広げていきます。私が継いだのは2006年。今、ファストファッションという言葉が定着しているように、その頃からアパレル業界では大企業が海外で大量生産する形がどんどん増えていきます。それに伴い、平成の初めの頃は東京都繊維染色協同組合に加入していた企業が100社程度あったのですが、今ではたった7社となりました。一時期はうちも厳しい状況になりましたが、結果的に生き残ることができたのは、大規模過ぎなかったことが一因だと思います。大規模な工場で大量生産するのであれば、コストが低い海外の工場に発注したほうがいいんですよね。一方、うちのような規模ではそもそも大企業が求める大量生産が難しい。その分、小ロットだけれども難しい技術や、手間のかかる作業が必要な細かいオーダーに対応することができ、多少値段は高くても付加価値の高い服を作りたいという要望とマッチしたのです。今では都心にあるという利点も相まって有名ブランドからの依頼をいただくようになりました。

内田さん
「立教の同級生とバンドを組んで池袋JAZZフェスティバルに出演。
グラデーション染めの衣装を作りました」

━工場内には若い方の姿がたくさん見られますね。━

そうですね。美大やファッションの専門学校を出た若い職人が多く働いていて、「こうしたら面白いのではないか」と次々と新しい提案をしてくれます。かつての職人仕事のイメージとは異なり、最新機器も積極的に導入しています。それにより、細かく数値化されたデータをもとに、様々な作業が効率よくできるようになりました。このように合理化できるところは合理化する。そうすることで、こだわる部分に徹底的に手間をかけることができるのです。

━今後はどのような展望を描いていらっしゃいますか。━
ファストファッションの影響もあり、ファッション業界は大量生産、大量廃棄が当たり前となっていました。しかし、「サステナブル」という地球環境に配慮する考えが浸透してきたことで、そういった服の作り方への問題意識が高まっています。その流れを受けて、私たちも在庫として残っている服を染め直し、新たな付加価値を付けて売り出そうという取り組みを始めました。今後は、アップサイクルブランドとして力を入れていきたいと考えています。また、SNSでの発信にも力を入れています。SNSの普及によって海外に直接アプローチして、ダイレクトに受注できるようになりました。これからは日本国内だけでなく、海外にも目を向けていきたいですね。

内田さん
「在庫となっていたものを染め直した服。様々な技術を駆使しています」

今まで培ってきた技術を時代にあわせながら活かしていく柔軟性、それが移り変わりの激しいファッション業界で生き残っていくための秘訣のようだ。
苔色工房

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