1. ホーム
  2. 会報
  3. Alumni Special Interview
  4. 研究室をたずねて 塚本伸一先生

Alumni Special Interview

研究室を訪ねて
現代心理学部 塚本伸一先生

現代心理学部の塚本伸一学部長は、1977年に文学部心理学科に入学された校友です。以来、上越教育大学に助教授として赴任された5年間を除き、40年もの長きに渡り、立教生活を送られています。

塚本先生

親への反発が「心理学」の扉を開いた

両親含め、親戚一同が教員という環境で育ちました。子どもの頃から「伸ちゃんは先生に向いてるね」と言われ続けたせいか、「絶対に教員にはなるまい」と反発していました。とはいえ、やはり「蛙の子は蛙」。高校2年生のころには「子どもの発達や成長にはどんな環境が必要なのか」に、興味を持ちました。子どもの成長に関われる教育以外のアプローチを探った結果、自分なりに出した結論が、「心理学」だったのです。
受験前、横浜の田舎から東京へ出てきて、初めて足を踏み入れた立教のキャンパスの素晴らしさに、「ここだ!」と直感。これが、立教大学とのご縁の始まりでした。
ただ入学してまもなく、自分が想像していた「心理学」と現実の授業はほぼ別物であることに気づきました。実際の心理学は統計を使い、実験など実証的な方法で心理や行動を分析することが主流。数学は好きでしたし、理系的なアプローチにも魅力を感じたのが幸いでした。3年生で発達心理学を専門とする中島力(つとむ)先生のゼミに入りましたが、4年生になってから中島先生の元では赤ん坊を対象とした卒論を書くのは難しいことが発覚。最終的には学習心理学の石井巌先生のご指導で、マウスの赤ん坊を使った実験をテーマに卒論を書きました。
卒業後の進路はほとんど迷うことなく大学院へ。「人間の発達」について、充分な研究ができなかったことが大きな理由です。そしてもう1つ、そのころの私は心理学を教える存在、もしくは教員を育てる存在になりたいと考えるようになっていたのです。

塚本先生 
上越教育大の赴任4年目に立教で博士学位を取得

新潟でライフワークに出会う

上越教育大学学校教育学部に助教授として迎えていただいたのは、立教の心理学科で助手として6年間、非常勤講師として3年目を迎える時でした。約3年前に結婚した妻は、東京大学の大学院生。単身赴任が決まってから、週に1度、片道5時間をかけて通ってくれました。
それにしても「いつか教員の養成をしたい」という希望を抱いていた自分が公募で採用されたのが、教員を養成する学校だったとは。有り難いご縁を感じます。ここでは現職教員を大学院に2年間受け入れ、教員の力量形成を図っていました。現役の小中高の先生方と接する中で、新たな学びの場を与えていただけたことは、研究者として本当に幸せな5年間でした。現在に直接つながるライフワークの基礎や方向性が、形づくられた時期でもありました。



立教独自のカリキュラム

立教大学に戻ったのは、1999年。中島先生の後任として、自分を育ててくれた研究室を継げた歓びは、ひとしおでした。
2006年には心理学科が「現代心理学部」として、文学部から独立し、新座キャンパスに移りました。14年から16年の2年間は、副総長を務めています。組織の運営、経営という立場で他の学部の先生方と関わり、立教大学全体がよりよい方向に向かうお手伝いができたという点では、貴重で楽しい経験でもありました。
一番大きな想い出は、「立教ラーニングスタイル」を実施できたこと。一般教育、専門と分けずに、一体として大学教育を構成する立教独自のカリキュラムです。

塚本先生
心理学科助手時代。学科の教員たちと

コロナ禍に思うこと

コロナ禍においては、大学全体が原則としてオンラインでの授業となりました。オンラインに伴う問題の一方で、教員の立場からはさまざまな可能性も見えてきました。メリットとしては新座と池袋の2つのキャンパスを距離的・時間的に隔てていた壁が一部とはいえ解消されたことです。例えば映像身体学科、大川景子先生の「ドキュメンタリー映画論」は、通常200人のところ700人の履修者を集めました。高名なドキュメンタリー映画の監督を多数ゲストスピーカーとしてお呼びしたことも話題になりました。
今後は、対面では実現が難しい海外の高名な先生による授業も視野に入ってくるはずです。また、技術の開発・進歩により聴覚などさまざまなしょうがいのある学生にとっては、利便性の高い面を持つこともわかってきました。一方でリモート授業は、その適応性において個人差が大きいことも把握しています。学習の定着率、情報の収集という面で、学生間に広がる格差を食い止めることが課題です。今後は対面授業の代替としてではなく、互いに補い合うようなシステムとしての可能性を探っていきたいと考えています。
オンラインであるか否かに関わらず、多くの学生にとって大学での4年間は様々なことを自由に、自分自身で決められる最後の期間です。友達との関係を深めるもいいし、徹底して趣味を極めるのもいい。もちろん勉学に打ち込むのもいい。ただ流されるのではなく、ぜひ自分で考え、判断し、選択することに貴重な4年間を費やしていただけたらと願っています。( 取材/河西真紀)


Page Top